株式は、長期的に高いリターンを期待できる代表的な資産です。一方で、短期間に資産価値が大きく下がる可能性があり、決して「安全な投資」ではありません。
場合によっては50%前後の下落が起こり、元の水準に戻るまで何年もかかることもあります。それでも株式が長期投資に向いているのは、リスクがなくなるからではなく、回復を待つための時間を確保できるからです。
この記事では、株式のリターンが期待できる理由と暴落リスク、長期投資における時間の役割、債券との違いをわかりやすく解説します。
株式の最大の強みは長期的な期待リターンの高さ
株式が長期の資産形成で中心的な投資先になりやすい理由は、企業の成長や利益拡大の恩恵を受けられるからです。
株式を保有することは、その企業の一部を所有することを意味します。企業が商品やサービスを販売して利益を増やし、事業を拡大すれば、その成果は株価の上昇や配当として株主に還元される可能性があります。
もちろん、すべての企業が成長するわけではありません。業績が悪化する企業や、競争に負けて市場から退出する企業もあります。
しかし、幅広い企業に分散して投資すれば、特定の企業の成否だけに依存せず、経済全体や企業全体の成長を取り込むことができます。全世界株式や主要な株価指数に連動するインデックスファンドが長期投資でよく利用されるのも、このためです。
企業は利益を増やすために、新商品を開発したり、業務を効率化したり、新しい市場へ進出したりします。物価が上昇した場合も、企業によっては販売価格を引き上げ、売上や利益を増やせる可能性があります。
このように、株式には企業活動を通じて価値が増えていく仕組みがあります。大きな価格変動を受け入れる代わりに、長期的な成長を期待できることが、株式の最大の特徴です。
ただし、高いリターンが期待できることと、毎年安定して利益が出ることは同じではありません。株価は短期的には大きく上下するため、数年間にわたってリターンが低迷する可能性もあります。
株式は50%前後下落することもある
「長期投資なら株式は低リスクになる」と考える人もいますが、正確ではありません。
保有期間を長くしても、株式市場の暴落そのものがなくなるわけではないからです。金融危機や景気後退、感染症の拡大、戦争、急激な金利上昇などが起きれば、株価は短期間で大きく下落することがあります。
市場環境によっては、株式資産が一時的に30%、40%、場合によっては50%前後減少する可能性もあります。
例えば、1,000万円を株式で運用していた場合、評価額が500万〜700万円程度まで減ることも想定しておく必要があります。その後に市場が回復するとしても、元の水準に戻るまで5年、10年という時間がかかる可能性も否定できません。
ここで問題になるのは、評価額が下がること自体だけではありません。より大きな問題は、価格が下がっている時期にお金が必要になり、株式を売らざるを得なくなることです。
例えば、数年以内に住宅購入の頭金として使う予定のお金を、すべて株式で運用していたとします。購入直前に株価が大きく下落すれば、予定どおり住宅を購入するために、損失が出ている状態で売却しなければならないかもしれません。
子どもの教育費や車の購入費、生活防衛資金などについても同様です。
株式投資では、価格が回復するまで保有を続けられれば、一時的な下落を乗り越えられる可能性があります。しかし、必要な時期が決まっているお金には、その時間的な余裕がありません。
そのため、株式に投資する前には「どれくらい増えそうか」だけでなく、いつ使う予定のお金なのかを確認することが重要です。
長期投資で重要なのは下落を避けることではなく待てること
長期投資という言葉には、「長く持てば損をしない」「時間がたてばリスクが消える」という印象があるかもしれません。
しかし、長期投資の本質は、株価の下落を起こらなくすることではありません。下落が起きても、回復を待てる状態を作ることです。
株価が大きく下がったとき、生活費や近い将来の支出を株式とは別に確保していれば、慌てて売却する必要はありません。そのまま保有を続け、市場や企業業績が回復するのを待つことができます。
一方、保有期間を長くするつもりでも、生活資金まで投資していれば、急な出費が発生したときに売却が必要になります。つまり、長期投資ができるかどうかは、本人の意思の強さだけでは決まりません。
長期投資を実践するには、資金を使う時期に応じて分けておく必要があります。
近い将来に使うお金
数年以内に使うことが決まっている資金は、預金など価格変動の小さい方法で確保するのが基本です。
具体的には、日々の生活費、緊急時の予備資金、住宅購入資金、教育費、車の買い替え費用などが該当します。
必要な時期が近い資金ほど、増やすことよりも、必要なときに予定した金額を使えることが優先されます。
長期間使う予定のないお金
老後資金など、10年以上先まで使う予定のない資金であれば、短期的な値下がりを受け入れやすくなります。
下落直後に売却する必要がなければ、長い時間をかけて市場の回復を待てるためです。積立投資を続けている場合は、株価が低い時期にも一定額を購入し続けることで、安い価格で多くの口数を買える場合もあります。
ただし、保有期間が長ければ必ず利益が出ると保証されるわけではありません。長期投資は、株式のリスクをなくす方法ではなく、時間を使ってリスクを扱いやすくする方法と考えるのが適切です。
株式と債券はリターンだけでなく役割が違う
資産形成を考えるときは、株式と債券のどちらが優れているかではなく、それぞれがどのような役割を持つのかを理解することが大切です。
株式は価格変動が大きい代わりに、企業の成長を通じて高いリターンを期待できます。そのため、長期的に資産を増やす役割を担いやすい資産です。
一方、債券は国や企業にお金を貸し、その対価として利息を受け取る仕組みです。一般的には株式よりも値動きが小さく、資産全体の変動を抑える目的で利用されます。
例えば、資産のすべてを株式にすると、暴落時に資産全体が大きく減少します。株式と値動きの異なる債券や現金を組み合わせれば、資産全体の下落幅を抑えやすくなります。
ただし、債券や預金にもリスクがないわけではありません。
金利が上昇すれば、保有している債券の価格が下落する場合があります。また、受け取れる利息が物価上昇率を下回れば、金額自体は減っていなくても、実際に購入できる商品やサービスは少なくなります。
例えば、資産が毎年1%増えても、物価が毎年3%上昇すれば、実質的な購買力は低下します。価格変動を抑えることだけを重視しすぎると、長期的にはインフレによって資産価値が目減りする可能性があります。
つまり、株式は「増やすための資産」、債券や現金は「値動きを抑え、必要な支出に備えるための資産」として考えると整理しやすくなります。
株式だけが正解なのではなく、資金を使う時期と自分が耐えられる値動きに合わせて組み合わせることが重要です。
まとめ
株式は、企業の成長や利益拡大を取り込めるため、長期的に高いリターンを期待できる資産です。一方で、短期間に50%前後下落し、回復まで何年もかかる可能性があります。
長期投資の意味は、株式の値下がりがなくなることではありません。暴落が起きても売らずに待てる時間と資金の余裕を持つことです。
まずは、生活防衛資金や数年以内に使うお金を株式から切り離しましょう。そのうえで、長期間使う予定のない資金を株式に回すことで、必要な支出を守りながら、長期的な成長の恩恵を受けやすくなります。
