資産形成を始めようと思うと、どの商品を買うかに目が向きがちです。しかし、カードローンやリボ払いなどの高金利の借金がある場合は、投資より先に負債を整理した方が、家計全体を改善しやすくなります。投資では味方になる複利が、借金では返済負担を増やす方向に働くからです。
複利は資産にも借金にも働く
複利とは、元本だけでなく、それまでに生まれた利益や利息にも次の利益・利息が発生する仕組みです。
投資では、運用によって得た利益を再投資することで、元本と利益の両方が次の利益を生みます。長期間運用するほど利益が利益を生み、資産が雪だるま式に増えていく可能性があります。
一方、借金では反対のことが起こります。借りた元本に利息がかかり、返済が進まなければ、その後も利息の負担が続きます。
つまり、複利という仕組み自体に良い・悪いがあるわけではありません。
資産を持つ側にいれば複利は味方になり、負債を抱える側にいれば家計を圧迫する要因になります。
資産形成では、できるだけ早く投資を始めることが重要だといわれます。しかし、その前提となるのは、複利を資産側で働かせられる家計になっていることです。高金利の借金が残っている状態では、投資を始めても、その裏側で利息の支払いが資産形成を妨げてしまいます。
高金利のカードローンが家計を圧迫する理由
カードローンやリボ払いなどでは、年率15〜18%程度の高い金利が設定されることがあります。
例えば、100万円を年18%で借りている場合、単純計算では年間18万円相当の利息が発生する水準です。実際の利息額は返済状況や計算方法によって異なりますが、金利負担が小さくないことは分かります。
さらに、高金利の借金は利息を支払うだけでなく、毎月の家計にも影響します。
毎月3万円を返済していれば、その3万円は積立投資や貯蓄には回せません。返済期間が長引くほど、将来の資産を作るために使えるお金も減ってしまいます。
投資の利益と借金の利息には、大きな違いがあります。
投資では、将来どれだけ利益が出るかは分かりません。株式市場が上昇する年もあれば、資産価格が下落する年もあります。一方、借金の利息は、投資成績に関係なく、契約に基づいて支払う必要があります。
投資のリターンは不確実ですが、借入金利による負担は確実性が高い支出です。
返済が遅れれば、遅延損害金などの追加負担が発生する可能性もあります。高金利の借金は、資産形成のスピードを遅らせるだけでなく、家計の安定性そのものを低下させます。
「72の法則」で金利の大きさを理解する
金利の影響を直感的に理解する方法として、「72の法則」があります。
72の法則とは、72を金利で割ることで、複利によって金額が約2倍になるまでの期間を概算する方法です。
計算式は次のとおりです。
72 ÷ 金利 = 約2倍になるまでの年数
例えば、年18%の場合は次のようになります。
72 ÷ 18 = 4
単純化した複利計算では、年18%で増え続けると約4年で2倍、同じペースが続けば約8年で4倍になる計算です。
もちろん、実際のカードローンでは毎月返済を行うため、借入残高がそのまま2倍、4倍になるわけではありません。返済によって元本が減れば、発生する利息も変わります。
そのため、72の法則は返済総額を正確に計算するためのものではなく、年18%という金利がどれほど大きいかを理解する目安として使うのが適切です。
投資の世界では、年数%のリターンを長期間積み重ねることが重視されます。それに対して、借金で年15〜18%の金利を支払っている場合、複利の効果を資産形成とは反対の方向に受けていることになります。
高金利の借金を抱えながら投資する矛盾
「借金は毎月返済しながら、余ったお金で投資もすればよい」と考える人もいるかもしれません。
しかし、高金利の借金がある状態での投資は、家計全体で見ると効率が悪くなる可能性があります。
例えば、投資によって年5%の利益を得られたとしても、別のところで年18%の金利を支払っていれば、家計全体の収支は改善しにくくなります。
しかも、投資で毎年安定して利益を得られるとは限りません。投資した直後に相場が下落する可能性もあります。一方、借金の利息は相場の状況に関係なく発生します。
投資で年18%を一度達成することはあっても、それを長期間安定して続けるのは容易ではありません。そのため、高金利の借金を残したまま、投資でそれ以上の利益を狙う方法は、再現性の高い資産形成とはいえません。
高金利負債を返済すれば、その後に支払うはずだった利息を減らせます。投資のように値動きがあるわけではなく、返済した分だけ借入残高が減り、将来の利息負担も軽くなります。
高金利の借金返済は、投資商品ではありませんが、効果を見通しやすい家計改善策です。
借金を完済すれば、それまで返済に使っていたお金を、貯蓄や長期投資に回せるようになります。資産形成を加速させるためにも、まずは毎月の資金流出を止めることが重要です。
すべてのローンではなく「高金利負債」を優先する
借金を先に返すといっても、すべてのローンを一律に否定する必要はありません。
住宅ローンのような比較的低金利の借入と、カードローンやリボ払いなどの高金利の借入では、家計への影響が異なります。
住宅ローンを繰り上げ返済するか、余剰資金を投資に回すかは、金利、住宅ローン控除、手元資金、収入の安定性などを踏まえて判断する必要があります。
一方、カードローンやリボ払いのように金利が高い借入は、投資より優先して整理する合理性が高くなります。
まずは、家計にある借入を次の項目で一覧化してみましょう。
- 借入先
- 借入残高
- 適用されている金利
- 毎月の返済額
- 完済予定時期
- 返済が遅れた場合の条件
借入残高だけを見るのではなく、金利と返済期間を確認することが重要です。同じ100万円の借金でも、金利が低い場合と高い場合では、最終的な利息負担が大きく異なります。
複数の借入がある場合は、基本的には金利の高いものから優先して返済することで、将来の利息負担を抑えやすくなります。
ただし、手元の現金をすべて返済に使うのは避けた方が安全です。
急な病気や失業、家電の故障などに備える生活資金まで返済に回すと、予想外の支出が発生した際に、再び借金をすることになりかねません。
必要な生活資金を確保したうえで、余剰資金を高金利負債の返済に回すという順番が現実的です。
まとめ
複利は、資産を持つ側では長期的な資産形成を支える一方、高金利の借金を抱える側では返済負担を増やします。投資を始める前に、まず借入残高、金利、毎月の返済額を確認しましょう。カードローンやリボ払いなどの高金利負債がある場合は、必要な生活資金を残しながら優先的に整理することが重要です。家計から高い利息が流出する状態を解消し、安定した余剰資金を作ってから長期投資へ進みましょう。
