「言われた通りに作る人」から抜け出す|コンサルの付加価値の出し方

  

クライアントの要望を正確に聞き、依頼された資料をきれいに仕上げることは大切です。しかし、それだけではコンサルタントではなく、作業代行になってしまいます。

コンサルに本当に期待されているのは、クライアントがまだ言語化できていない課題や選択肢を整理し、意思決定につながる示唆を提示することです。本記事では、そのために必要な視座、仮説、具体策の考え方を解説します。

プロジェクトに入ったばかりの頃は、クライアントに「どのような資料を作ればよいですか」「何を調べればよいですか」と確認したくなるものです。

認識齟齬を防ぐための確認は必要ですが、成果物の内容をすべてクライアントに決めてもらい、その通りに作るだけでは、コンサルタント側の付加価値はほとんど生まれません。

クライアントから聞くべきなのは、具体的な成果物だけではなく、その成果物を使って何を実現したいのかです。

例えば、「競合他社の事例を整理してほしい」という依頼があったとします。このとき、競合事例を一覧表にまとめるだけでは不十分です。

まず確認すべきなのは、次のような目的です。

  • 新規事業への参入可否を判断したいのか
  • 自社の取り組みが競合より遅れていないか確認したいのか
  • 経営会議で投資の必要性を説明したいのか
  • 今後採用すべき施策の候補を絞りたいのか

目的によって、調べる情報も、比較軸も、最終的な資料の構成も変わります。

新規事業への参入判断が目的であれば、市場規模や収益性、参入障壁が重要です。一方で、施策の候補を絞ることが目的なら、各社の取り組み内容や導入条件、期待効果を比較する必要があります。

重要なのは、クライアントに「何を作りますか」と答えを求めるのではなく、目的を理解したうえで、「この目的であれば、こういう分析と成果物が必要です」と提案することです。

成果物は依頼されるものではなく、目的を達成する手段として設計する。この意識を持つだけでも、仕事の質は大きく変わります。

プロジェクトでは、日常的にやり取りするクライアント担当者の要望に意識が集中しがちです。

しかし、担当者が納得していても、その上司や役員から承認を得られなければ、提案は前に進みません。

例えば、現場担当者が業務効率化を重視している一方で、部門長は費用対効果を気にしているかもしれません。さらに経営層は、その施策が全社戦略とどのようにつながるのかを確認するでしょう。

目の前の担当者だけを見て資料を作ると、上位者への説明段階で、次のような指摘を受ける可能性があります。

  • どれだけコストを削減できるのか
  • 売上や利益にどのような影響があるのか
  • なぜ今取り組む必要があるのか
  • 他の施策より優先する理由は何か
  • 全社で展開できるのか

こうした手戻りを減らすには、常に「この人の上司なら何を気にするか」を考える必要があります。

担当者の視点では、目の前の業務課題や実行方法が重要です。部門長の視点では、部門全体への効果や投資対効果が重要になります。経営層の視点では、全社戦略との整合性や中長期的な競争力が論点になります。

視座を上げるとは、経営層らしい難しい言葉を使うことではありません。目の前の論点を、より大きな目的や意思決定と結び付けて考えることです。

具体的には、資料を作成する前に次の問いを置くと効果的です。

  • この資料は最終的に誰が見るのか
  • その人は何を判断するのか
  • 判断するために不足している情報は何か
  • 反対意見が出るとすれば、どこか
  • 相手が次に聞いてくる質問は何か

一段上の視点で問いを先回りすることが、コンサルタントの価値につながります。

コンサルタントには「示唆を出すこと」が求められます。しかし、示唆という言葉は抽象的で、具体的に何をすればよいか分かりにくいものです。

示唆をつくる方法は、大きく「広さ」と「深さ」の2方向に分けられます。

広さ:相手の問題意識の外側から情報を持ってくる

広さとは、クライアントがまだ認識していない情報や選択肢を持ち込むことです。

例えば、クライアントが自社と国内競合だけを比較しているのであれば、海外企業や異業種の事例を加えることで、新しい選択肢が見えるかもしれません。

また、社内の関係者だけにヒアリングしているのであれば、顧客や取引先、現場のデータを見ることで、問題の捉え方が変わる可能性があります。

広さを出すときのポイントは、単に大量の情報を集めることではありません。相手の現在の認識から外れているが、意思決定には重要な情報を探すことです。

「他に見るべき市場はないか」「別の業界ではどうしているか」「社外から見ると何が問題か」と考えることで、分析の範囲を広げられます。

深さ:既知の情報を組み合わせて新しい意味をつくる

深さとは、クライアントがすでに知っている情報から、新しい洞察を導き出すことです。

例えば、売上が減少していること、顧客数が減っていること、解約率が上がっていることを、それぞれ個別に整理するだけでは、事実の報告にすぎません。

一方で、これらを組み合わせて分析し、「新規顧客の獲得不足よりも、既存顧客の離脱増加が売上減少の主因である」と整理できれば、取るべき対策が見えてきます。

情報を整理した後には、必ず次の問いを置く必要があります。

  • だから何が言えるのか
  • 何が最も重要なのか
  • これまでの認識と何が違うのか
  • このまま進むと何が起きるのか
  • どの選択肢を優先すべきか

示唆とは、情報量の多さではなく、情報から意思決定に必要な意味を引き出すことです。

クライアントに対して価値を出そうとすると、「十分に分析してから、完成度の高い答えを提示しなければならない」と考えがちです。

しかし、プロジェクトの初期段階では、情報が不足していることが一般的です。クライアント自身も、課題や答えを明確に言語化できているとは限りません。

その状態で完成した答えを作ろうとすると、調査や資料作成に時間がかかるうえ、前提がずれていた場合には大きな手戻りが発生します。

そこで重要になるのが、仮説です。

仮説とは、限られた情報をもとに置く「現時点で最も可能性の高い答え」です。正解である必要はありません。議論を始めるための材料として提示します。

例えば、業務が遅れている原因を分析する場合、最初からすべての関係者にヒアリングするのではなく、次のような仮説を置きます。

「担当者の作業スピードではなく、承認工程の多さが全体のリードタイムを長くしているのではないか」

この仮説をクライアントに提示すると、「承認よりも、情報の入力待ちが問題だ」「特定部門だけ承認に時間がかかっている」といった具体的な反応を得られます。

つまり、仮説は答えを当てるためだけのものではなく、相手の知識や問題意識を引き出すための道具でもあります。

仕事の進め方を、「聞く→作る」から、次の流れに変えてみましょう。

  1. 目的と現状を確認する
  2. 自分なりの仮説を置く
  3. 仮説をクライアントに提示する
  4. 反応や追加情報を得る
  5. 仮説を修正し、分析を深める

仮説が外れていても、議論によって早期に修正できれば問題ありません。むしろ、何も考えずに質問を繰り返すより、仮説を持って対話する方が、短時間で論点を明確にできます。

分析が得意な人ほど、問題の構造をきれいに整理した段階で満足してしまうことがあります。

しかし、クライアントにとって重要なのは、問題の説明ではなく、問題を解決してビジネスを前に進めることです。

「組織間の連携不足が課題です」「業務プロセスが複雑です」「担当者によって品質にばらつきがあります」と指摘するだけでは、現場は動けません。

分析の後には、必ず「では、具体的に何をするのか」を提示する必要があります。

例えば、「組織間の連携不足」が課題であれば、次の段階まで具体化します。

  • どの組織間で情報が止まっているのか
  • どのタイミングで連携が必要なのか
  • 誰が情報を渡す責任を持つのか
  • どの会議やツールで共有するのか
  • まずどの部署から試すのか

解決策を考えるときは、壮大な改革案だけでなく、最初の一歩まで示すことが重要です。

「全社の業務プロセスを再設計する」と言われても、すぐには動けません。一方で、「まず対象業務を一つ選び、関係部署と現行プロセスを2週間で可視化する」と示せば、具体的な行動に移せます。

提案には、少なくとも次の要素を含めましょう。

  • 実施すること
  • 実施する主体
  • 実施する順番
  • おおよその期限
  • 判断・確認するポイント

分析からアクションまでつなげることで、資料は単なる説明資料ではなく、意思決定と実行を支えるものになります。

まとめ

コンサルの価値は、依頼された資料を正確かつきれいに作ることだけではありません。目的を理解し、担当者より一段上の視座から論点を捉え、広さと深さの両面で示唆をつくることが重要です。

さらに、完成した答えを待つのではなく、仮説を早めに提示して議論し、問題分析を具体的な行動まで落とし込みます。毎回の報告前に、「前回から何が新しく分かり、次に何をすべきか」を問い直すことから始めてみてください。

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