外資コンサルはなぜ「とりあえず資料」を作らないのか

 

「とりあえず資料を作ろう」

仕事を進める中で、このように考えてPowerPointやExcelを開くことは少なくありません。しかし、目的が曖昧なまま資料を作り始めることが、かえって生産性を下げたり、意思決定を遅らせたりすることがあります。

外資系コンサルティングの現場では、何でもすぐに資料化するのではなく、議論の目的やフェーズに応じて「今は資料を作らない」と判断することがあります。

重要なのは、資料を作らないこと自体ではありません。成果を出すために、本当に資料が必要なタイミングを見極めることです。

この記事では、なぜ「とりあえず資料」が非効率を生みやすいのか、資料を作らない方がよい場面と作るべき場面をどう見分けるのかを解説します。

目的が不明確なまま作成された資料は、一見すると仕事が進んでいるように見えます。しかし実際には、余計な作業や誤解を生むことがあります。

たとえば、まだアイデアを検討している初期段階で、見栄えの整った資料を作ったとします。

すると、その資料を見た関係者が「すでにこの方向で決まっている」と受け取ってしまい、本来は自由に議論すべき選択肢が狭まることがあります。

また、作り手自身も、一度きれいに資料化すると、その構成や内容に引っ張られやすくなります。せっかく時間をかけて作ったページを捨てたくないという意識が働き、本来見直すべき前提まで残してしまうこともあります。

資料は、作った瞬間から議論に一定の「型」を与えます。

そのため、論点や結論がまだ流動的な段階で形を固定してしまうと、

  • 本来検討すべき論点が抜ける
  • 仮の案が決定事項のように受け取られる
  • 資料修正そのものに時間を取られる
  • 見た目の調整に意識が向き、肝心の議論が浅くなる

といった問題が起こりやすくなります。

特に注意したいのが、「何を考えるべきか」が決まっていない状態で、とりあえずPowerPointを開くことです。

資料を作りながら考えること自体が悪いわけではありません。しかし、論点整理が目的なら、最初から完成形に近い資料を作る必要はありません。

まず考えるべきなのは、資料をどう作るかではなく、何を決める必要があるのかです。

議論の目的や結論がまだ定まっていない段階では、資料作成よりも対話や議論を通じて考えを整理する方が効率的です。

この段階では、

  • 紙に論点を書き出す
  • ホワイトボードで構造を整理する
  • 箇条書きのメモを作る
  • 関係者と短時間話して認識を合わせる

といった、簡単に変更できる方法の方が適しています。

なぜなら、議論の初期段階では、話しているうちに「そもそも検討すべきことが違った」と分かることも多いからです。

たとえば、新しい施策について会議をするとき、最初から20ページの説明資料を作るより、

「今日は何を決めたいのか」

「判断するために何が分かればよいのか」

「どの選択肢を比較するのか」

を先に整理した方が、その後の資料作成も速くなります。

ここでいう「資料を作らない」は、準備をしないという意味ではありません。

考えることと、資料化することを分けるということです。

まず対話やメモで考えを整理し、伝えるべき内容が固まってから必要な形にする。この順番にすることで、資料作成そのものに使う時間も減らせます。

外資系コンサルティングの現場では、会議の目的によっては、完成された資料を持ち込まずに議論することがあります。

これは「準備をしていない」ということではありません。

むしろ、議論のフェーズに合わせて、あえてアウトプットを固定しないという考え方です。

たとえば、次のような段階では、完成された資料がなくても議論できます。

  • 何が問題なのかを整理する
  • 仮説を出し合う
  • 調査すべき論点を決める
  • 選択肢を洗い出す
  • 方向性について意見を交換する

こうした場面では、きれいな資料よりも、ホワイトボードや簡単なメモの方が議論しやすいことがあります。

一方で、資料が必要になるのは、結論を正式に共有するときだけとは限りません。

たとえば、

  • 複雑な情報を構造化して議論したい
  • 数値や選択肢を比較したい
  • 多人数で共通認識をそろえたい
  • 意思決定者に判断材料を提示したい
  • 決定事項を記録として残したい

といった場合には、議論の途中でも資料が有効です。

つまり、「資料を作るか、作らないか」を一律に決めるのではなく、その場で達成したい目的に最も適した手段を選ぶことが重要です。

では、どのタイミングで資料作成に着手すればよいのでしょうか。

一つの判断基準になるのが、次の3つです。

1. 「誰に」伝えるのかが明確である

まず確認したいのは、資料を見る相手です。

同じテーマでも、

  • 経営層に意思決定してもらう
  • プロジェクトメンバーに作業内容を共有する
  • 顧客に提案内容を説明する

のでは、必要な情報も資料の粒度も変わります。

受け手が曖昧なまま作ると、「誰にも刺さらない資料」になりやすくなります。

資料を作り始める前に、この資料を最終的に誰が見るのかを明確にしましょう。

2. 「何を」伝えるのかが固まっている

次に必要なのが、伝える内容の骨子です。

細かな文章まで決まっている必要はありませんが、

「結局、何を伝えたいのか」

「相手に理解してほしいポイントは何か」

「どのような順番なら伝わるか」

という大枠は整理しておく必要があります。

ここが曖昧な状態で資料を作り始めると、ページを作っては消す作業が増えます。

まずは箇条書きでもよいので、伝える内容の構造を作ってから資料化する方が効率的です。

3. 「なぜ」伝えるのかが明確である

最後に確認したいのが、資料の目的です。

たとえば、

  • 意思決定してもらう
  • 状況を理解してもらう
  • 課題を共有する
  • 承認を得る
  • 次のアクションを決める

など、資料には何らかの目的があります。

「とりあえず説明するため」という状態では、何をどこまで書けばよいのか判断できません。

資料を見た相手に、最終的に何を理解・判断・行動してほしいのか。

ここまで明確になると、必要な情報と不要な情報を切り分けやすくなります。

資料作成を効率化するためには、PowerPointを開く前に一度立ち止まることが有効です。

次の3ステップで考えてみましょう。

ステップ1:今回の目的を一文で言えるか

まず、

「この資料は○○のために作る」

と一文で説明できるか確認します。

説明できない場合は、まだ資料作成に入るには早い可能性があります。

まず関係者と話し、何を決めたいのかを整理した方がよいでしょう。

ステップ2:本当に“資料”が必要か考える

目的が明確になったら、その目的を達成するために資料が必要かを考えます。

5分話せば済むことであれば、わざわざ10ページの資料を作る必要はありません。

メール、チャット、簡単なメモ、ホワイトボードで十分なこともあります。

資料を作ることではなく、最も少ない労力で目的を達成することを基準に判断します。

ステップ3:「誰に・何を・なぜ」を確認してから作る

資料が必要だと判断したら、

  • 誰に伝えるのか
  • 何を伝えるのか
  • なぜ伝えるのか

を確認します。

この3つが明確であれば、資料の構成や必要な情報も自然に決まりやすくなります。

逆に、このどれかが曖昧なら、いきなり作り込まず、まず簡単なアウトラインやメモから始めた方が安全です。

資料作成で重要なのは、作業スピードだけではありません。

不要な資料を作らないことも、資料作成スキルの一つです。

まとめ

資料作成は、目的を達成するための手段です。資料を作ること自体が仕事の目的になってしまうと、時間をかけた割に意思決定や行動につながらないことがあります。

特に、論点や目的が曖昧な段階では、いきなり資料を作り込むのではなく、まず対話やメモを使って考えを整理する方が効率的です。

そのうえで、

「誰に伝えるのか」「何を伝えるのか」「なぜ伝えるのか」

が明確になったら、必要な資料を必要な粒度で作ります。

次に資料を作ろうとしたときは、すぐにPowerPointを開く前に、「この資料は本当に必要か」と一度考えてみてください。

成果につながらない資料を作らないこと。その判断もまた、成果を最大化するための重要な仕事術です。

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