「インデックス投資は右肩上がり」とよく言われますが、その根拠を構造的に理解している人は意外と少ないかもしれません。
特に重要なのは、どのインデックスを前提にしているかです。過去には停滞した指数(例:日本株)も存在するため、「右肩上がり」はすべてのインデックスに当てはまるわけではありません。
本記事では、全世界株式インデックス(例:MSCI ACWI)を前提に、「なぜ長期で右肩上がりになりやすいのか?」そして「なぜ投資手法として優れているのか?」を、資本主義の仕組みとインデックス構造の両面から解説します。
理由①|資本主義経済は世界全体を成長させる
資本主義は、利益の追求を前提とした競争の仕組みです。企業は生産性を上げ、技術を革新し、市場を拡大することで収益を伸ばそうとします。この構造が経済成長を生み出しやすくしています。
特に、世界全体を見渡すと、以下の3要素が成長の土台になっています。
- 人口の増加(特に新興国)
- 消費の拡大(生活水準・欲求の多様化)
- インフレ傾向(名目成長と資産価値の上昇)
たとえば世界のGDPは、局所的な危機(リーマンショックやパンデミック)を経ても、長期では一貫して成長を続けています。これは、資本主義経済が持つ構造的な拡張性の結果です。
理由②|全世界インデックスは成長国を取り込み、停滞リスクを回避する
一方、個別の国単位で見れば、成長が鈍化したり、衰退したりすることは現実に起こります。たとえば日本株はバブル崩壊以降、30年以上にわたり長期停滞を経験しました。
しかし、全世界インデックスは以下のような構造を持つことで、こうしたリスクを構造的に回避します。
- 世界中の数千社に分散されており、特定の国に依存しない
- 時価総額加重により、成長国・成長企業の比重が自動的に増加
- 停滞した国や企業は自然と構成比率が下がる、または除外される
つまり、成長している国の影響力が大きくなり、衰退国の影響は減っていく設計になっているため、「世界全体が成長し続ける限り、インデックスも成長していく」構造が成立しているのです。
理由③|インデックス構造が時間とともにポートフォリオを自動で最適化する
インデックス投資の強みは、単なる「分散」だけではありません。特に全世界株式インデックスのように時価総額加重平均で構成されている指数は、以下のような動的な最適化メカニズムを備えています。
- 株価が上昇し、時価総額が大きくなる企業の構成比率が上がる
- 低迷した企業は比率が下がり、最終的には除外されることもある
- 結果として、指数全体は「成長企業中心のポートフォリオ」に自動で進化していく
この仕組みによって、インデックス投資は個別銘柄の選定や売買を行わなくても、自然にポートフォリオの質が向上していくのです。
つまり、何もしなくても合理的に「勝ち組企業」へ投資し続ける設計になっている。これが、インデックス投資の本質的な優位性のひとつです。
まとめ
ここまで見てきた通り、全世界株式インデックスが右肩上がりになりやすいのは、構造的な必然です。
- 資本主義経済が持つ、長期的な成長の構造
- 成長国・成長企業に比重が自動で移る仕組み
- 時価総額加重によるポートフォリオの自動進化
このような設計により、インデックス投資は市場の短期的なノイズや一時的な悲観を乗り越え、長期で安定した成長を取り込むことができるのです。
だからこそ、「なぜ上がり続けるのか?」という問いに対して明確な答えを持っておくことは、投資を継続する上で大きな支えになります。全世界インデックス投資は、「根拠ある信頼」で持ち続けられる、極めて合理的な選択肢と言えるでしょう。