プロジェクトが思うように進まないと、「現場が協力してくれない」「プロジェクトチームの推進力が弱い」と、誰かに原因を求めたくなります。しかし、本当の問題は個人の能力ではなく、関係者同士が対立する構造になっていることかもしれません。本記事では、経営・現場・PJチームが同じ目標に向かって動くためのプロジェクト推進の考え方を解説します。
停滞するプロジェクトにありがちな「対立構造」
プロジェクトが停滞しているとき、関係者の間では次のような不満が生まれがちです。
- 経営陣:「プロジェクトチームの進捗が遅い」
- PJチーム:「経営陣は現場の事情を分かっていない」
- 現場:「プロジェクトチームは無理な要求ばかりしてくる」
- PJチーム:「現場は目の前の業務しか考えていない」
それぞれの言い分だけを見れば、もっともらしく聞こえます。
経営陣は会社として必要だからプロジェクトを進めたい。現場には既存業務があり、プロジェクト対応だけに時間を使えるわけではない。PJチームは期限までに成果を出す必要があるため、現場に情報提供や作業を依頼しなければなりません。
問題なのは、こうした事情の違いそのものではありません。
「同じ問題を解決する仲間」ではなく、「プロジェクトが進まない原因は相手にある」と考える状態になってしまうことです。
たとえば、PJチームが現場に作業を依頼し、対応が遅れるたびに催促する構造になっていると、現場から見ればPJチームは「追加業務を押しつけてくる人」になります。
一方、PJチームから見れば、現場は「何度依頼しても動いてくれない人」です。
この状態でPJチームが説明や説得を頑張っても、根本的な対立構造は変わりません。そこで必要になるのが、コミュニケーションだけではなく、誰が目標達成に責任を持つのかというプロジェクトのガバナンスを見直すことです。
プロジェクトチームだけに責任を負わせない
プロジェクトでは、実務を推進するPJチームに責任が集中しやすくなります。
しかし、多くのプロジェクトはPJチームだけでは完結しません。
関係部署から情報を提供してもらう、業務を変更してもらう、内容を確認してもらう、意思決定してもらうなど、現場側の協力が必要になります。
それにもかかわらず、
「プロジェクトの目標達成責任はPJチームにある」
「関係部署は依頼されたら協力する」
という構造にすると、両者の立場に大きな差が生まれます。
PJチームは成果を出すために必死ですが、関係部署から見ればプロジェクト対応は本来業務に追加された仕事になりやすいためです。
そこで重要なのが、経営トップやプロジェクトスポンサー(プロジェクトを経営側から支援し、部門間の調整や意思決定を担う責任者)から、PJチームだけでなく関係部署にも目標達成への責任を持たせることです。
たとえば、「PJチームがこのプロジェクトを成功させる」ではなく、「関係部署も含めて、この目標を達成する」と位置付けます。
ここで重要なのは、単に「プロジェクトに協力してください」と依頼することではありません。
経営側から、
- なぜこのプロジェクトを行うのか
- 会社として何を達成する必要があるのか
- 各部署に何を期待しているのか
を明確にし、プロジェクトへの関与を関係部署自身の役割として位置付けることです。
責任の置き方が変われば、PJチームと現場の関係も変わります。
現場を「協力させる対象」から「同じ目標を持つ仲間」に変える
関係部署にも目標達成への責任を持ってもらうと、PJチームとの関係を逆転させることができます。
従来は、
「PJチームがプロジェクトを進めるために、現場へ協力をお願いする」
という構図だったかもしれません。
これを、
「現場が自分たちに課された目標を達成するために、PJチームの支援を受ける」
という構図に変えます。
PJチームは現場に仕事を押しつける存在ではなく、現場が目標を達成するための支援者になります。
ただし、PJチームが支援するためには、当然ながら現場側にも協力してもらう必要があります。
たとえば、
「この業務を改善するために、現状の業務フローを整理します。そのため、この情報を提供してください」
「新しい仕組みを導入するためにこちらで案を作ります。その代わり、内容の確認とフィードバックをお願いします」
といった形です。
ポイントは、単なる「PJチームからの作業依頼」にしないことです。
現場自身の目標達成に必要なプロセスとして、PJチームへの情報提供や作業協力を位置付けることで、双方が同じ目的に向かいやすくなります。
もちろん、これだけで全員が積極的に動いてくれるとは限りません。
通常業務が忙しい、優先順位が低い、プロジェクトの必要性に納得していないなど、協力が進まないケースもあります。
そこで次に重要になるのが、プロジェクトスポンサーなど、経営側の責任者の役割です。
必要なときは経営側の責任者に動いてもらう
PJチームが何度依頼しても、関係部署から必要な協力を得られないことがあります。
このとき、担当者が延々と催促を続けるだけでは、問題が解決しないことがあります。
なぜなら、担当者同士では優先順位そのものを変えられない場合があるからです。
現場の担当者からすれば、
「通常業務もあるので、プロジェクト対応を優先できない」
という状況かもしれません。
その優先順位を変える必要があるのであれば、PJチームの担当者が説得し続けるのではなく、プロジェクトスポンサーなど適切な権限を持つ人に働きかけてもらう必要があります。
スポンサーは名前だけの存在ではなく、部署をまたぐ課題を解消し、プロジェクトを前に進めるための役割を持ちます。
たとえば、特定部署の対応が進まずプロジェクト全体の日程に影響する場合には、
- PJチームが必要な協力内容と影響を整理する
- 関係部署と直接調整する
- それでも進まなければスポンサーへ状況を共有する
- 必要に応じてスポンサーから関係部署へ優先順位を示してもらう
という流れが考えられます。
ここで大切なのは、スポンサーを「言うことを聞かない部署を叱ってもらう人」にしないことです。
目的は対立を激しくすることではありません。
会社として決めた目標と各部署の責任を確認し、現場だけでは解決できない優先順位の問題を、適切なレベルで解消することです。
プレッシャーを一方向ではなく循環させる
最終的に目指したいのは、
「経営からPJチームがプレッシャーを受け、そのPJチームが現場を押す」
という一方向の構造ではありません。
この形では、
経営
↓
PJチーム
↓
現場
とプレッシャーが流れ、最終的に「経営・PJチーム vs 現場」のような対立が生まれやすくなります。
逆に設計したいのは、
経営 → 現場 ↔ PJチーム
という関係です。
経営トップやスポンサーが、関係部署に目標達成への責任を持たせる。
関係部署は、その目標を達成するためにPJチームへ支援を求める。
PJチームは必要な支援を提供し、そのために必要な情報提供や作業協力を現場へ求める。
現場だけでは優先順位を変えられない問題があれば、PJチームからスポンサーへ共有し、スポンサーから必要な働きかけを行う。
こうすることで、プレッシャーを単純に上から下へ流すのではなく、それぞれが自分の責任を果たすために相互に働きかける構造をつくることができます。
プロジェクト推進というと、担当者の説明力や調整力に目が向きがちです。
もちろんそれらも重要ですが、担当者が頑張って説得し続けなければ動かないプロジェクトは、そもそもの座組に問題がある可能性があります。
プロジェクトが停滞したときは、「もっと強く依頼するにはどうするか」を考える前に、誰が誰に対して責任を負っている構造なのかを確認してみることが重要です。
まとめ
プロジェクトが動かないとき、原因を「現場が協力しない」「PJチームの推進力が弱い」と個人に求めるだけでは解決しないことがあります。重要なのは、PJチームだけに目標達成責任を負わせず、経営・現場・PJチームがそれぞれ同じ目標に責任を持つ構造をつくることです。停滞したプロジェクトほど、コミュニケーション方法だけでなく、誰が誰に責任を負う座組になっているかを見直してみてください。
